光り
変わっていく日常の中で
変わらないものは何だろう
目まぐるしく ぐるぐると
刻々と 次々と
日々 世界が変わっていき
そして自分も 変わっていった
醜い自分を嫌悪する昼
苦しくて 涙を流す夕方
恐怖で眠れない夜
そんな自分がいたことに 驚いて
そんな自分がいたことに 興味深さを感じて
世界を見つめ 自分を見つめ
変わっていく日常の中で
変わらないものは何だろう
いつのまにか 季節がすぎて
ぽこぽこ ぽこぽこ
ゆっくりと
世界も 自分も 変わっていく
変わっていく日常の中で
変わらないものは何だろう
まさに「変容」するさなかで
気付いた
大切にしているもの
譲れないもの
気にしすぎていたもの
嫌だったもの
恐れていたもの
――愛しているもの
変わることが怖かった
大好きなものがなくなりそうで
でも そうじゃないのね
変わっていくことは かならずしも 悪いことじゃない
変わらないものもあった
ゆるぎないものもあった
まだ 信じきれていないものもあるけれど
だからきっと 大丈夫
私はこの世界で 息が吸える
またひとつ 殻がやぶけた
変わらない日常の中で
変わらないものは何だろう
(「さあ なんでしょう?」と笑ったキミの
その笑顔は まぶしかった)
贅沢な読書会記~『熱帯』をめぐって④~
夜明け。
――ある朝を見たときから、それは始まっていたんだ。
ただ1つの奇跡を願って。
僕は夜空を見上げる。
朝は近い。きっと、そろそろ太陽が顔を出し始める頃だろう。
肌寒い。はぁ、と吐いた息は白かった。体をさする。
僕は太陽を待っていた。
たとえ世界が闇に包まれていても、時間だけは変わらない。
残酷なまでに、万物に平等な“時”を与え続ける。
地球が崩壊した後、『時間』という概念が残り続けるのかは知らないが、
きっとそれでも、当たり前のように、太陽は在るのだろう。
1年前も、僕はこの場所にいた。そして夜明けを待っていた。
この暗い、暗い、闇の中で、ただ1つの奇跡を願って。ただ1つの軌跡を辿って。
しんしんと冷える。じりじりと待つ。まだなのか。早く、早く。
朝は来ないのか。
徐々に、ゆっくりと、もったいぶったように、太陽が地平線の彼方から顔を出す。
朝日が、差し込んでくる。
まぶしくて、思わず目を細める。暗さに慣れた目には鮮烈すぎた。
まぶしさと共に、あたたかさも感じる。
命と恵みを与えてくれるもの。希望と勇気を与えてくれるもの。
時には「明日」がくることに、絶望を感じることもあるけれど。
それでも「今日」がくることに、どこか安堵している自分もいる。
よし、と呟いて、ぱんっと頬を両手で叩いた。
また1年、がんばろう。
神様、見ててね。
あけまして、おめでとう。
(――僕の挑戦が。)
沈黙しない読書会と直後の読書会~『熱帯』をめぐって③~
沈黙しない読書会と沈黙しない直後の読書会
~森見登美彦『熱帯』をめぐって③~
以前の『熱帯』に関する記事はこちら
→森見登美彦と太宰治~『熱帯』をめぐって②~ - パセリ流星群
夏の嵐のように過ぎ去り、冬のひまわりのように面妖な二日間だった。
あの二日だけ、私の日常からぽっかりと遊離して、今でもどこかをふわふわ飛び回っているような、そんな感覚である。
https://books.bunshun.jp/articles/-/4536
森見登美彦『熱帯』から生まれた謎は紙面を飛び出し、読者たちを更なる冒険へと駆り立てた。
2018年12月15日土曜日
『熱帯』に関する公式イベント「沈黙しない読書会」
2018年12月16日日曜日
『熱帯』に関する非公式イベント「沈黙しない直後の読書会」
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その1(『ランダム・ウォーク』)
(*)
それは狭くて、薄暗くて、乾いていて、居心地の良い場所。
人びとは、暴風雨に行き当たった時だけ、洞窟に駆け込んでくる。ひととおり水を落とし、服を脱ぎ、裸の背をひんやりとした砂地に横たえる。
世界にとって僕は、そうした洞窟のような存在なのだと思う。
雨はじきに止み、人びとがまた外に出ていくことを、僕は知っている。酒に酔ったように浮かれて、心のひだまで分かちあってくれた人が、振り返ることなく洞窟を後にする姿を、何度も見送ってきた。
きみが暗闇で見せてくれた火傷の跡に、なすすべもなく欲情する。僕は、僕が洞窟であることを心から喜び、そして憎んでいる。きみをこの胎内に捕まえておきたいという願いが叶うことは、永遠に無い。
静まり返ったアパートの布団のなかで、僕は射精を迎える。その瞬間だけ、世界との間に不完全な橋が架かる。吐き出された温かな生き物の気配をティッシュ越しに感じて、悔しく甘酸っぱい感情が、胸を満たす。